泣いている自分。
ただそれだけしか出来なかった自分の前には、天流闘神士がたった一人、自分を庇って、
目の前に立ちはだかる地流闘神士2人と戦っていた。
両派の闘神士に使役された式神同士が目の前で激突し―――天流派の式神が勝ったと同時に、
目の前が眩しくて、何も見えなくなるくらいの強い光に呑み込まれた。
―――…後の記憶は、何も残っていない。
酷く魘され、はっと目を開けた先は薄暗い天井。
「また、あの夢か…」
上半身を起こしながら、リクは溜息を吐く。
気になる内容の夢には違いないが…今考えていても埒はあかない。
「…あ、今日はおじいちゃんのお見舞いに行かないといけなかったんだっけ」
リクは頭を振って、意識的に夢の内容を振り払うと、立ち上がってひとつ伸びをして―――
―――相棒に一言声を掛けてから出かけようと、枕元に置いてあった神操機を手に取った。
「コゲンタ」
反応なし。
「…コゲンタ?」
一向に返事の無い相棒に、心配になったリクが神操機に向かって再度声を掛けた時、
「ZZZ……ムニャムニャ…」
神操機からは、何とも呑気な寝言が。
『若しかして…本気で寝てる…!?』
一瞬絶句し、『僕もコゲンタも熟睡していて…この間に地流派が襲ってきたら如何するんだ』とか、
『寝ながら結界張ってられるの?!』とか、様々な文句が一瞬にしてリクの心中で沸き起こったが、
「…ま、僕も寝てたんだから、おあいこだよね」
気を取り直して小さく微笑うと、リクは神操機をポケットに入れ、部屋から玄関へと向かった。
…因みに、7年ほど前にも似たような状況があったが、その時の契約者は
「コゲンタぁぁぁぁっ!!!」
…と、問答無用で降神して叩き起こしていたりする。
and more...