吉川家 零神操機内 式神戦隊『作戦会議』。
「さて、我等が主の事でおじゃるが」
「何?」
「一体如何すれば、あの無鉄砲な“無茶”を止めて下さるのか…」
「…素直にそのまま言えば?」
「率直に言って聞いて下さるような方なら、今頃このような会合を開いていないであります!」
「ま、それもそうだね」
「ここは矢張り“直談判”が良いのでは?!」
「…僕達の話ちゃんと聞いてたの?それに、逆立ちしながら言っても説得力ないよ、リクドウ」
「では、そういうタンカムイ殿は一体如何すれば良いと?」
「ん〜…僕の陰陽銛“大志”でも、ヤクモの頭上に落としてみようか?」
「ヤクモ様が死んでしまうであります!」
「冗談に決まってるでしょ?この面子で揃って名落宮に行きたくなんかないよ。
何処まで腐れ縁になるんだか判らないじゃないか」
「………………」
「…泣くな、ブリュネ」
「く、悔しいであります…!」
「…ま、そんな下らない冗談は如何でも良いんだけど」
『『『『“黒い冗談”の間違いでは?』』』』
「こっそりイヅナさんに言って、料理の中に何か一服盛ってもらうとか、如何?」
「…一体何を“盛る”のか…一応、訊いても良いでおじゃるか?」
「うん?勿論、睡眠薬を10錠位飲ませて眠らせるんだよ。
眠ってたら無茶も出来ないし、薬作りはサネマロの得意技でしょ?」
「10錠も飲ませたらヤクモ様が死んでしまうので止めて下さい。
…せめて、1.2錠くらいで何とか」
「そんな少量じゃ、ヤクモの事だから普通に起きちゃうんじゃないの?」
「いや、麻呂達にもひた隠しにしている疲労には、たった1錠の睡眠薬で十分でおじゃる!」
「そうなの?」
「サネマロ殿の作る薬は1錠で効力満載、千倍!」
「薬ではなく、もっと穏便な方法でヤクモ様の無茶を止める方法は無いものか…」
「では、私と一緒に伏魔殿の某所でバナナの叩き売りでも!」
「…何でヤクモがバナナの叩き売りなんかしなきゃいけないんだよ?」
「同感であります」
「叩き売り…疲れさせて無茶できないようにさせたいのでおじゃるか?」
「ご名答!
名刀と言えばこの私の陰陽大剣“太郎兵衛”と“次郎兵衛”!
さぁ、寄ってらっしゃい見てらっしゃい!華麗なる剣舞をとくと御覧あれ!!」
「剣振り回すなら何処か離れたところでやってくれない?リクドウ」
「只でさえ無茶をしているというのに、更に疲れさせるのは得策ではないかと」
「同感であります」
「そうでおじゃるな」
「だね」
「ガーーーン!」
「その次。誰か良い案ある?」
「モンジュ殿に説得してもらっては如何だろうか?」
「確かに、一番効きそうだけど…」
「効いてるのなら、今頃このような会合を開いてはいないでおじゃるな」
「矢張り駄目か…」
「駄目元で言わないでくれる?一応真剣な会議してるんだから」
『自分の事は棚に上げておくのか…』
「いっそ、麻呂達でヤクモ殿を労わるでおじゃるか?」
「どうやって?」
「麻呂はマッサージ。タンカムイ殿は氷枕代わり。リクドウ殿は調理担当で…」
「自分とタカマル殿は?」
「……その他適当に、でおじゃる」
「「………………」」
「…やっぱりさ、全員の長所を生かしきれないのは良くないんじゃない?」
「良い案だと思ったのでおじゃるが…」
「…こういう案もあるであります。
サネマロ殿の闘神戦術講座を、ヤクモ様に受講させるが良いのではないかと、自分は思うであります」
「駄目だよ!今よりますます無茶するようになるかも知れないじゃない」
「だが、より効果的な闘い方を知ることで、ヤクモ様の負担が減るかも知れないな」
「それも一理あるでおじゃるな」
「私も其れが良いと思います!」
「そう?…ならそれで良いんじゃない?
…これで、“決まり”だね」
「では早速ヤクモ様に」
「タカマル殿、待つであります!」
「今は月の輝く、寝る子も育つ夜中でっせ〜」
「…朝まで気長に待つしかないね」
「…そうでおじゃるな」
…こうして、束の間の“現世”の夜は更けていく。
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