「………………」
「…………;」
「……………;」

――――沈黙が場を支配する。









**  消したくない過去と疑いたくない未来 **









「………………」
「…未来?」
「如何した、未来?」
ヴィネコンの画面を凝視したまま、ピクリとも動かない未来の姿に、流石に不審に思ったベールとルシファーが其々声を掛けた。
「…修行ね」
「「は?」」
「だから、修行」
「…誰が?」
「勿論、パパよ」
「なっ何故だ?!私が修行する必要など…」
「大有りよパパ。今、私がキングライザーに入れてある刻印弾丸に封印してある仲魔達は皆、パパより強いの。
パパをディープホールに連れて行こうと思ったら、誰か一体コールして、パパと入れ替えなきゃいけないのよ。
…でも、その仲魔がパパより強かったら、交代の説明をしても納得して貰える訳ないでしょ?」
「う、うむ…し、併しだな、未来…」
「併しもだっても何も無いわよ、パパ!時間は残り少ないの!!刹那の準備が終わるまで、訓練所で修行してきてね」
「だが、魔貨は…」
「大丈夫よ。カジノで一儲けしてきたから」
未来は、自分の足元に置いてあった小さめのリュックの中から袋を取り出し、袋を開きつつルシファーに見せる。
取り出した袋の中には、魔貨が溢れんばかりに入っていた。
「これだけで足りないって言われたら、ちゃんと銀行から引き出してくるから。…じゃ、訓練所に行きましょうか♪」
最早相手の反論すら聞かずにきっぱり言い切って、魔貨の入った袋を直して背中にリュックを背負った未来は、
パートナーデビルのベール―――キンググリフォン―――と共に訓練所のある方へと歩き始めた。


娘の後姿を見ながら、ふと思う。
今は亡き妻に良く似た娘は、その性格すらも妻に似たらしい。
あの気丈な判断力と行動力と強かさは、自分には無いものだ。
『嘘吐くのは止めた方が良いんじゃない?』と、人の心を読んだかのような、微かに苦笑を含んだ腐れ縁の悪友の声が
風に乗って何処からか聞こえたような気がしたが、今は気付かない振りをした。








“ノルンの子供”達による、世界の『運命』がもう直ぐ決まる。
新たな『世界』の夜明けは、自分達が望んだ『ラグナロク』か、それとも――――…。
















<UP:04.4.25/5.12>